小川未明先生に「日本海の匂いなます瓜カレー」はいかがでしょう。 |
奈良のお寺シリーズ10月は小説家・童話作家の小川未明先生を紹介します。
明治15年(1882)4月新潟県中頸城郡高田町、現在の上越市に生まれました。本名は健作。
「未明」とは『早稲田大学在学中に雑誌『新小説』へ『漂浪児』を載せて貰った時、
恩師坪内逍遥先生が附けて下された名です。ゲーテが美はトワイライトにありと言ったが、
同じ薄明りでもダウンの方が未来があるから未明(未だ明るい)とした方がよかろうと
言われた。』と自伝に書いています。
読み方も「ミメイ」ではなく「ビメイ」が正しいのだそうです。
明治38年23才の時、読売新聞に『鬼子母神』、新小説に『霰(アラレ)と霙(ミゾレ)』を発表、
作家としての地位を確立していきます。
明治39年「早稲田文学社」に入社。島村抱月指導の元で「少年文庫」の編集に携わり、
また新しい童話運動を起こそうと『海底の都』『天女の命乞』等の童話を書きました。
明治43年日本最初の創作童話集『赤い船』を刊行。
大正10年代表作『赤いローソクと人魚』を朝日新聞に発表しました。
『人魚は南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいた
のであります。北方の海の色は青うございました。』の書き出しで『ローソク屋の
老夫婦に育てられた人魚の赤ん坊は娘になり、やがて娘の描く赤いローソクを持って
お参りすると船が沈まないと評判になり家は豊かになります。それを聞きつけた
南国の香具師が大金で娘を買い取り見世物にしようと企みます。悲しみの娘が最後に
描いた真っ赤なローソクが売れた夜から嵐になり、娘を乗せた船は難破、やがて町は
廃れ滅んだ。』という話。
ハッピーエンドの多い今日の童話とは一線を画しています。
大正9年大正日日新聞に童話『野バラ』を発表。反戦の思いを書いた作品と
いわれています。
『小さな国と大きな国の国境に双方の国の警備兵が立ち、石碑を守っていました。
1株の野バラの横で正直で親切な二人は仲良くなっていきます。やがて二つの国は
戦争、敵・味方になり、若い兵は北へ移り戦争は終わりました。残された老兵の夢の
中に馬に乗った若い兵が現れバラの匂いを嗅いで消えて行きました。そして野バラは
枯れました。』と。
この作品は後大正12年、神田駿河台下にあった中央仏教会館ピースサロンで開かれた
「三人の会」で朗読されました。社会主義陣営、プロレタリア文士連も水を打った
ように静まり返ったそうです。未明先生の長い人生において忘れえぬ集いであったろう
と、令嬢鈴江さんは著書『父 小川未明』の中に書いています。
大正15年44才『未明選書』完結と共に小説の筆を絶ち、童話に専心する決意を
東京日日新聞に発表。同じ年「日本童話作家協会」の創立に参加、初代会長を務めます。
昭和19年少国民文化協会の第1回文化功労章。21年第5回野間文芸賞。
26年芸術院賞などを受賞。
28年芸術院会員、文化功労者に推挙されました。
没後に制定された「未明奨励賞」に奈良県大淀町出身の児童文学者花岡大学先生が
『かたすみの満月』で第3回目(1960年)を受賞しています。
奈良のお寺との関わりは随筆『菩提樹の花』にあります。
『西大寺の境内に休んで疲れを癒していた。頭上に白い花が咲いており、案内人に
聞くと菩提樹の花という。云うに云われぬ静寂の感がその時不意に襲った。続いて
唐招提寺に辿り着いた時は日暮、吹く風は薄寒くて物寂しかった。』とあります。
季節は晩春ですね。
春の菩提樹は花の香が甘く、秋になれば細長い葉を竹とんぼのプロペラの様にして
丸い実を付けた軸が舞い降りていくのが見られます。
そこでカレーですが「日本海の匂いなます瓜カレー」はいかがでしょうか。
なます瓜は金糸瓜、そうめん瓜の名で知られています。茹でると中の身がほぐれ、
そうめんの様になり、上越市の伝統野菜に入っています。
もう1品は日本海の魚メギスの干物を使いました。キスと名は付きますが一般の
白キスとは別の種類でニギス目ニギス科の魚です。身は柔らかく味はいいのですが
傷みやすいため魚醤に漬け低温乾燥させて加工品にしています。そしていつでも
スーパーで買える焼ギスも使いました。
材料 そうめん瓜、オリーブ油、自家製カレー粉、塩、コショウ、焼キス、塩レモン、
酢生姜、昆布水、玉葱、自家製カレールー、ギンナン、サツマイモ、赤ピーマン、
オクラ、なす、キューリ、サラダ油、メギスの干物。
作り方 ①焼キスは串を抜いて半分に切り、圧力鍋に並べ入れます。
その中に塩レモン大スプーン1杯、酢生姜少々、昆布水をひたひたに入れ、
キッチンペーパーで蓋をします。加圧時間5分、後、冷ましておきます。
これで頭、骨全部食べられます。
その中に①のキスの塩レモン煮を汁ごと入れ、自家製カレールー2人分を
加えて、キスの形が残るように一煮立ちさせます。
③オクラ4本、ギンナン、赤ピーマンの細切り、サツマイモの薄切り、
キューリとナスの一口乱切りはサラダ油で軽く素揚げします。
④そうめん瓜は4等分の輪切り(4㎝位)、大きいと更に半分に切って、
中の種、わたを取り出し熱湯の中で約5分間茹でます。それを水に取り
フォークでほぐすとそうめんのようになります。
ふたつかみ位のそうめん瓜の水分を取ってオリーブ油少々入れた
フライパンで炒め、自家製カレー粉大スプーン1杯、塩・コショウ少々で
味を入れます。
残りの茹でそうめん瓜はふたつかみ位に分けて冷凍しておきます。
使うときは水で流せばスタンバイOKです。
盛り付けは少し深みのあるお皿にカレー味そうめん瓜を盛り、
周りにキスカレーをしいて、揚げたオクラ、ギンナン、赤ピーマン、サツマイモ、
キューリ、ナスを色よく盛って、更にメギスの干物を上にちぎってかけ、完成です。
何とも日本海的なカレーになりました。
そうめん瓜はシャキシャキと歯ごたえよく、量もあるので白いご飯は要りません。
炭水化物抜きのカレーですね。