水上勉先生に「山のカレー ズッキーニボートにチョップドサラダ」はいかがでしょうか。 |
大正8年(1919)福井県大飯郡本郷村、現在の大飯町に生まれました。
ペンネーム「みなかみ つとむ」は本名の漢字「水上」を
「みなかみ」と読まれていたのでそれを採用したという訳です。
編集者の皆さんからは「ベンさん」と呼ばれていました。
9才で京都の臨済宗相国寺塔頭瑞春院に入門、12才で得度。後、
等持院に移り17才で還俗。
以後、苦学の内に立命館大学国文科に入学するも半年で中退しました。
戦後上京。会社「虹書房」を興し、雑誌『新文芸』を創刊します。
昭和21年、宇野浩二の『苦の世界』を刊行した事により知遇を得、
宇野先生を「文学の師」と仰ぐようになりました。
昭和22年処女作『フライパンの歌』を発表。好評を得るものの、その後が
続かず、生活苦、体調不良も重なり、文学活動から遠ざかっていったのでした。
昭和34年、社会派推理小説『霧と影』で執筆を再開します。
現実に起きた事件をヒントに北陸を舞台にしたサスペンス物で、
昭和36年「ニュー東映」で映画化されました。
この作品により翌年「第14回日本探偵作家クラブ賞」を受賞。
その後「人間」を描きたいという気持から、禅寺での自己体験を元に
『雁の寺』を昭和36年発表、「第45回直木賞」を受賞しました。
舞台になっています。
先生の詠んだ俳句に「母恋いの若狭は遠し雁の旅」があります。
『雁の寺』に出てくる寺の襖絵は、子雁に餌を含ませている母雁の
姿を描いているのです。
先生の小説の底辺、核は「飢餓」といわれていますが、案外「母恋い」も
入っていたのではないかと思います。
以後は越前、越後、京都を舞台に『五番町夕霧楼』『越前竹人形』
『飢餓海峡』と続き、数々の作品が映画化されました。
後の軽井沢での生活を描いた『土を喰ふ日々』、北御牧村での
『精進百選』共に禅寺で供される典座を自身で調理し紹介しています。
「男子厨房に入る」ですね。
多作作家で、挙げるだけでも菊池寛賞、吉川英治文学賞、
谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞、日本芸術院賞、大飯町名誉町民、
文化功労章、旭日重光章、等16もの賞を受賞しています。
こんな勉先生の奈良をテーマにした作品に『修験峡殺人事件』
『郷野の鐘』『月ヶ瀬の奈良さらし』があります。
この『月ヶ瀬の奈良さらし』は奈良の麻問屋さんと共に、
月ヶ瀬の手つむぎ共同作業所を見学した紀行文です。
昭和42年9月から43年12月にかけて、雑誌『太陽』に連載された文で
当時新しく開通した名阪道路、月ヶ瀬ダムの工事が始まった頃の
様子等紹介されています。
文中に「原料の麻は、福島や越後から送られてくる苧を
使いました。」と、案内された中川さんの言葉があります。
麻は奈良で産せず、他国の苧を買い入れていたのですね。
そこでカレーですが
「山のカレー・ズッキーニボートにチョップドサラダ」は
如何でしょうか。
勉先生は70才を過ぎた頃、大病を患い入院。退院後は信州の里山に移り、
畑で野菜を育てていました。山の生活の中でこんなカレーは如何だった
でしょうかと提案してみました。
材料 玄米、ターメリック、塩、梅干し、緑のズッキーニ、
ひよこ豆、ベイリーフ、鶏ミンチ、生姜、玉葱、オリーブ油、
自家製カレー粉、自家製カレールー、昆布水、バター、
牛乳、コショー、トマト、紫玉葱、ゆで卵、キューリ、
わらび、レタス。
作り方 ①玄米3合は軽く洗って圧力鍋に入れ、水700ml、
塩小スプーン1/2杯、ターメリック小スプーン1杯を加えて炊飯前1時間置いて
から炊きます。最初強火、重しが回ってから弱火で25分炊き、
火から下ろして約10分蒸らして出来上がりです。
炊き上がった玄米を大きめのお茶碗に入れ、梅干し2個を
ほぐして混ぜ入れます。
②ズッキーニ1本は塩少々を擦りこみ、そのまま熱湯の鍋で
2分茹で、冷水に入れます。
冷めたら両端を切り落とし、縦半分に切ります。
中のわたと種をスプーンで皮近くまでこそげ出して
おきます。
これがボートになります。
中身の綿は後でスープに使います。
③ひよこ豆1カップは前日より5倍位の水に漬けて置き、
翌日圧力鍋に塩小スプーン1/2杯、ベイリーフ1枚を入れて
約7分間炊きます。
④フライパンにオリーブ油少々いれて、玉葱中1/4個の
みじん切りと鶏ミンチ100gを炒め、自家製カレー粉
小スプーン1杯、生姜少々のみじん切りを加えて塩コショーで
味を入れます。
その中に③の水を切ったひよこ豆1カップ、
自家製カレールー1人分を加え、水分が
無くなるまで煮ます。
⑤スープは玉葱中1/4個とズッキーニの中身の細切りを
バターで炒め、冷ましてから昆布水1/2カップを加えて
ミキサーにかけます。
鍋に戻して牛乳を1カップ足して火入れします。そして
塩コショーで味を入れます。
⑥②のズッキーニをラップの上に置いて、その中に④の
ひよこ豆カレーとターメリックライスを重ねて山盛りに、その上に
茹でたわらびを乗せてラップで固く包みます。
⑦トマト、紫玉葱、ゆで卵、キューリ、レタスは1.5㎝角に切り、
茹でわらびは穂も軸もやはり1.5㎝に切り、全部一緒に
混ぜて、塩少々ふっておきます。
⑧ズッキーニボートをラップの上から4等分に切り、お皿に
⑦のチョップドサラダ、ひよこ豆カレーと一緒に色よく盛り、
出来上がりです。
ズッキーニはかぼちゃの仲間ですが、軽く茹でると皮も美味しく
食べられますし、カレーとの相性もいいです。
勉先生の山生活の時代は輸入野菜がまだ少なかったかもしれません。