橋本都耶子先生に「スケッチ旅行に持っていく春のカレー弁当」はいかがでしょう。 |
5月は小説家橋本都耶子先生をご紹介します。
大正7年(1918)奈良県に生まれました。
大雑把な地域の言い方ですが、
それは9才の頃、榧の木の湯桶に入っていたという表現から察するに
奈良の中心部ではなく、山中の生まれだったかもしれません。
10代の頃から小説を書き始め、同人誌「断層」に参加、以来「現在」
「天平の会」「文学雑誌」と師友に恵まれていました。
奈良市内の中学校、それも春日中学から始まって最後の三笠中学迄
国語教師として40年間勤めていました。
そして、その時期が同時に作家生活でもありました。
昭和52年発表の『朝鮮あさがお』で第6回平林たい子文学賞を受賞。
これは作品集で短編『花吹雪』を除いてすべて『文学雑誌』に発表し、
新聞などで評価を得たものです。
先生の教師時代は、
今「なら町」と呼ばれている地域、旧の元興寺境内に住居を構えていた
らしい事が作品の中に見て取れます。
『黒い扇風機』で「静かな奈良の町の小路の奥にある茶房」。
『二十六番大吉』は「古い遊郭の町である木辻の坂の暗い石だたみを
上ってのれんを押す銭湯」。
この銭湯は今も営業しておられるH(花園)温泉かな。
『鳴川の道』は「この小路を上りきったT字路の右が鳴川町で大昔は
元興寺の外郭にあたる僧坊の町」と。
この鳴川町の道は下が今暗渠になっています。
目をつむると、想像が膨らみ、その風景が浮かんできます。
敗戦後の世相や、『花吹雪』にみる奈良弁
「先生 花を1本挿しとかはるかぁー。」これは
「先生 花を1本花瓶に生けられますか。」という言い回しで、
大阪弁、京都弁とも違う都耶子先生独特のねっとり、おっとりした
言葉遣いが懐かしく、思わずその時代にタイムスリップしてしまいそう
です。
そこでカレーですが、
都耶子先生に「スケッチ旅行に持っていく春のカレー弁当」は如何でしょう。
短編「鬼ヶ峰」の文中に、
「ハンドバッグの中に古い展覧会の案内状にまじってちびたデッサン用の
鉛筆があったり」とあり、又、作中主人公に冬晴れの中、2、3枚スケッチ
させている情景描写があるので、外で食べるお弁当には、
これがいいのではないかと提案してみます。
材料 玉葱、鶏ミンチ、サラダ油、人参、セロリ、塩、コショウ、味噌、
自家製カレールー、トマト水煮缶、わらび、シメジ、タケノコ、
空豆、小松菜、さつま芋、卵、レタス、トマト、紫キャベツ。
作り方 ①フライパンにサラダ油少々ひいて、玉葱中1/2個のみじん切りを
透明になるまで炒め、続いて鶏ミンチ150g、人参中1/2と
セロリ1/3本のみじん切りを加え更に炒めます。
ここで軽く塩コショーで味をいれておきます。
②①の中にトマト水煮1缶、自家製カレールー2人分を水分を
飛ばしながら炒め煮、最後に味噌大スプーン1杯を加え混ぜます。
③別のフライパンにサラダ油少々入れ、トッピング用の野菜、
石づきを取ってほぐしたシメジ、さつま芋の薄切りと茹でて
姫皮をつけたタケノコの細切りを焼きながら、その横で一人
1個の目玉焼きを作ります。
小松菜1株と空豆は鍋でゆがき、小松菜を2㎝長さに切りそろえます。
ワラビは重曹を少し入れてゆがき、やはり2㎝に切り揃えます。
④付け合わせにちぎったレタス、トマトの乱切り、紫キャベツを
酢と塩で揉んだ物を用意しておきます。
⑤ドカベン弁当箱に麦入りご飯を1/3程の高さまで入れ、
さました②の鶏のキーマカレーを乗せ、トッピングの季節の
春野菜、横に付け合わせの野菜、目玉焼きを色よく詰め合わせて
出来上がりです。
隠し味に味噌を入れると、味にふくらみが生まれ、先生が奉職していた
時代の洋食の感覚に似るような気がします。
緩めに焼いた目玉焼きを混ぜると尚一層その感があります。