前先生に「山家さいぼしカレー」はいかがでしょう |
やっぱり「吉野の文学」と言えば、前先生が筆頭に挙げられるのではないでしょうか。
大正15年(1926)吉野郡下市町に生まれ、平成20年(2008)4月に亡くなっています。
下市町は吉野川の右岸に広がる周りを山に囲まれた谷間の町。支流の「秋野川」に沿って、
はらはらと散る桜の花びらを受けて街道を歩くのもいいですよ。
気が向けば、歌舞伎「義経千本桜」の舞台になった「つるべ寿司の弥助」に寄ったりしてね。
万葉集についての著書に「万葉びとの歌ごころ」があります。
この中に吉野を詠んだ明るい歌
『良き人の 良しとよく見て 良しと言いし吉野よく見よ 良き人よく見』
天武天皇の御製ですね。
近鉄の終点「吉野」駅を出たすぐ右側に歌碑が建っています。
前先生は「大らかな国讃めの歌である。」と言っています。
随筆の名手でもあり、「森の時間」、「病猪の散歩」(やみじしのさんぽ)は晩年の作歌と共に、
山の暮らしを描いています。
綴られている一語一語が雅びなんですね。
『言問い(コトトイ)を続けるだろう。』とか、『山住みの私は、時折大阪の人ごみへ昆虫か
草の実のように零れ出る。』とか。
この「こぼれる」の漢字は「零」(れい)を充てていますし、「客人」を「まれびと」と読む
とかですね。
やはり言葉をこんなにまで優雅に綴られると、こころが豊かになるようです。
それではここで一首ご紹介しましょう。
『山桜 そのひとつだに 伐(キ)らざりき いさぎよく 山の家 棄てざりき』
故郷の吉野を捨てず、山家の暮らしを愛しておられたのですね。
さてカレーですが「山家さいぼしカレー」はいかがでしょうか。
随筆「歌のある風景」に『人間が物を食べる始源は神々の恵みの実感であろう。今夜の
哀韻きわまりなき鹿の声に、心洗われつつ、野生の鹿の肉の味覚をも思う一人の人間が、
ここに覚めて存在する。」とあります。
吉野でもそうあるように、鹿は猪と共に、地域によって植林をあらす有害駆除の対象になって
います。
今回、奈良県の免許を受けて捕獲した鹿の「さいぼし」をカレーに入れてみました。
材料(2~3人分): 鹿のさいぼし、大豆の水煮、わらび水煮、にんにく、生姜、玉葱、セロリ、
人参、トマト水煮缶、塩、コショウ、サラダ油、ミックススパイス、黒豆、
ごま油、カシューナッツ。
作り方: ①ミックススパイスとはブラックペッパー、クミン、コリアンダー、マスタード等の粒
各3.5g、カルダモン粒1.7gを合せてミルで挽き、ターメリック粉大スプーン1杯を
まぜたもの。
今回シリーズではこれを使います。
一晩寝かせると昔懐かしいカレーの香りになりますよ。
②大豆1カップは一晩水につけたものを翌日圧力鍋で10分煮ます。
③圧力鍋にサラダ油少々入れ、玉葱、セロリ、人参の各100gの
みじん切りとにんにく、生姜のすったもの各小スプーン1杯
ミックススパイス小スプーン山もり2杯を入れて炒め、トマト水煮 1/2缶、
カシューナッツ2粒のみじん切りを加えて、塩、コショウし、7分圧力をかけます。
④冷ました③に大豆水煮200g、さいぼしの細切り100g、わらびの水煮少々を入れて
2分煮ます。
⑤また人参の細切りとわらびの水煮をごま油で炒め、塩、コショウをしておきます。
盛り付けは黒豆入りの玄米ご飯のおにぎりに鹿のさいぼしカレーを置き、横に人参と
わらびの炒めたものを添えます。
添えています割り箸は、吉野杉の「らん中」。
他のさいぼし肉でも美味しくできます。
一度お試しを